Subsections
において一番重要なのは
という係数の列だから, 初めに数列があって, 関数列はに対して後から作られたものとも考えられる. この意味で, の場合も含めてをの二項変換と呼ぶ. ここでは二項変換の逆変換を調べたいのだが, 例えば
を用いてを表せば
となるから, 自分自身が逆変換であると予想できる. 簡単にという場合を考えると,
であるから, の二項変換は
となり, 予想を裏付けている. そこで一般的にの二項変換を求めると, まず
であり, 次に
と変形できる. ここでKroneckerの5を用いて
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(4.27) |
であるから, 結局
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(4.28) |
を得る. よって二項変換の逆変換は自分自身であることが証明された.
先程の一般的な場合の証明はの場合に比べてかなり複雑になっている. 添字と指数の間には
のように強い対応関係が存在するのだから, の場合からすぐに一般の場合が従えばそれに越したことはない. そこで実際に
という写像を導入してみる. をとの対応から導出したことを考えると, さらに
という性質を要求するのが自然であるから, には線形性6を仮定する. 具体的に書くと,
とできるようなを導入したのである. この手法はumbral calculusという分野7で使われるもので, をevaluationと呼んで記号で表し, また変数のことをumbraと呼んで他の変数とは区別する. は頻繁に使うので
のように省略するのが普通だが, 対応するという意味で
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(4.30) |
と書くことにする. を使うと, の二項変換は
のように驚くほどあっさりと求めることができる.
二項変換の応用として第2種Stirling数を簡単な和で表す公式を導いてみる. は要素の集合を個の空でない部分集合に分ける方法の数で, を降冪
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(4.32) |
で展開したときの係数に現れる. つまり
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(4.33) |
ということだ8が,
だから
であり,
を代入すれば
となる. 今まで扱ってきた二項変換を交代二項変換と呼ぶことにすると, この形はを取り除いた非交代二項変換と呼ぶべきもので, 一般的に
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(4.34) |
とおいて9逆変換がどうなるのかを調べてみる. しかしこれは簡単で,
はの交代二項変換になっているから,
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(4.35) |
となる. よってを逆変換することで
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(4.36) |
を得る.
Kenichi Kondo
平成16年3月18日