Subsections
総和の問題の有名な例として
というものがある。また
のような例もある。このことから、
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(1.1) |
という計算では
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(1.2) |
となる
を探すのが本質的な問題になることが分かり、
が見つかれば
は
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(1.3) |
となって
の2つの値だけで決まってしまう。
これは
となる関数
が見つかれば、定積分
が簡単に求まるのと同じだと考えられる。つまり、様々な関数の微分を知っているから様々な関数の積分が簡単に実行できるのであるから、総和についても同じことが言えるはずだ、ということになる。また、そもそも積分もただの和の計算なのだから、積分に関する定理に似たものが総和の計算においてもあるのではなかろうか、とも考えられる。1
そこで微分演算子
に対応するものとして、差分演算子
を
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(1.4) |
と定義する。また
のとき、不定積分に対応して不定和分
を
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(1.5) |
と定義する。この定義から
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(1.6) |
となり、したがって
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(1.7) |
となることが分かる。具体的に
としてみると、
となり、よって
である。しかし
としても
であるから、
も正しい。さらに
であるから
としても正しい。一般に不定和分では、不定積分における積分定数に対応するものとして定数
や周期が
(
)の関数を付け加えることができ、これらを和分定数と呼ぶ。
今度は
(
)として、定積分に対応する定和分を
と定義する。この定義を通常の総和にならって
としなかったのは定積分に似せるためである。つまり、任意の
2に対して
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(1.9) |
が成り立ち、しかも
ならば
として
となり、したがって任意の
に対して
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(1.10) |
が成り立つのである。先程の例を使えば、
であるから
となり、この式の特別な場合として
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(1.11) |
という有名な公式が得られる。
一般に降冪
(
)を
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(1.12) |
と定義すると、
であれば
となり、微分における
に対応することが分かる。
であるから、
とすれば、
に対して
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(1.13) |
が成り立ち、よって
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(1.14) |
となる。降冪を使うと、例えば
であるから、
のように計算できる。
降冪の指数を負の整数にまで拡張してみよう。自然数
に対して
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(1.16) |
が成り立つので、
とすれば
であるから
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(1.17) |
となる。差分をとると
となり、うまくいっている。よって
に対して
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(1.19) |
が成り立つが、
の場合はどうなるのだろうか。つまり
のような
を求めたいのだが、
であれば調和級数の第
項までの和
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(1.20) |
がそれに相当することが分かる。
この
を一般の
に拡張するには
関数
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(1.21) |
を使う。部分積分を行えば
という重要な性質が得られる3。この式の両辺の対数をとって
とし、さらに微分をすれば
を得る。つまり
関数
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(1.23) |
を定義すれば、この関数は
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(1.24) |
という関係を満たす4。
に対して
の値は
となり、
の値はEuler-Mascheroni定数
を用いて
である。よって
であり、これをそのまま拡張すれば
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(1.25) |
が得られる。
の差分は当然
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(1.26) |
となる。
以上のことから、微分における
は差分における
に対応し、
は
に対応することが分かる。そこで指数関数に対応するものを調べるために
の差分をとってみると、
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(1.27) |
となるから、
であれば
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(1.28) |
となってこれが
に対応する。また上の計算から
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(1.29) |
が得られ、特に
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(1.30) |
である。
積の差分は
となって、微分の場合とほぼ同じである。この式には一見対称性がないが、
のように対称性は存在する。ここでずらし演算子
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(1.31) |
を定義すると5、積の差分は
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(1.32) |
となり、両辺の和分をとれば
となるから、部分和分の公式
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(1.33) |
が得られる。この公式を使えば
のような計算ができる。
ずらし演算子を用いると
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(1.34) |
であるから、高階の差分は
となることがすぐに分かる。
Kenichi Kondo
平成16年3月18日