最後の(4)は当然全ての自然数
に対して成り立つが, この形だと
が自然数である必要のないところが重要である. つまり, 二項係数を
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(5) |
と考えることで, 複素数
に対して
を自然に定義することができるのである. 試しにこの定義で
が
の逆元にならないかと計算してみると,
より
であるから, 例えば
の
の係数は
となるなのでうまくいっているようである.
ここで
を証明してもよいが, より一般的に複素数
に対して成り立つであろう指数法則
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(6) |
を証明する. この式を変形すると,
となるが, 左辺と比較するために右辺を
で整理することを考える. 右辺において例えば
が
や
ではなくこの順番で現れる場合だけを考えると,
となる. つまり
のような
のある順列について考えると,
の部分に左
個の要素が割り当てられる場合から,
個の要素が割り当てられる場合までの
回右辺に表れる. よって
で整理すれば
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(7) |
となるので, もとの式に代入して係数比較をすると,
を
で置き換えて
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(8) |
という式を証明すればよいことになる. これはVandermondeの畳み込みとして知られているものだが, ここで証明しておく.
が自然数の場合に正しいことは既に分かっているが, 例えば
という等式において
の係数を比較することで得られる.
が複素数でも成り立つことを証明するには, 両辺を
の多項式と考える.
が自然数の場合,
の
次以下の多項式
は全ての自然数が零点となるので, 恒等的に
である. 次に, 全ての自然数
について上の多項式は
となるから, 係数である
の多項式も同様の議論により全て
である. よって
が複素数の場合にでも(8)は成り立ち, 指数法則が証明された.
指数法則が証明されたので後は簡単である.
が有理数の場合, 当然
は
によってうまく定義される. また
は
の多項式だから, 多項式の正則性よりこの定義は
が複素数の場合に自然に拡張される. つまり, 複素数
に対して
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(9) |
と定義できるということである.
Kenichi Kondo
平成16年3月18日