一般の2次方程式は普通
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(1.1) |
という形で書かれ, 解の公式は
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(1.2) |
である. ここで標準形はどのような形にするべきかと考えると,
とするのはまず間違いなく, また解の形が簡単になるように
を
で置き換えるのがよい. つまり
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(1.3) |
となるのだが, 解が簡単になったのは
のように平方完成できるからで, 二項係数が出てきたということになる. このことから類推すると, 3次方程式は
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(1.4) |
が標準形ではないかと考えられる. 試しに定石通り
を代入してみると,
のように
の係数にうまく
が出て, 後で述べるように解の公式が簡単になる. つまり, 標準形として妥当な形である.
以上のことから, 一般に
次方程式の標準形は符号を入れ替えて二項係数を付けた形がよいと推測できるが, 今度は係数の添字の向きを
とするか,
とするかという問題が出てくる. ここで, それぞれの多項式が
という展開に対応すると考えると, 同次性や,
と
の対応から前者を採るのが自然である. ここに現れる多項式を二項型多項式(binomial-form polynomial, bfp)と呼んで,
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(1.6) |
と表すことにすると,
次方程式の標準形は
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(1.7) |
となる.
それらしい理由をつけて標準形を導いてみたが, 解の形が簡単になるという程度では説得力がないかもしれない. ところが, bfpは他の場面でも本質的な役割を果たし, それを考え合わせると方程式の標準形についても納得することができる. この文章では, 実際にそのような場面を紹介することでbfpの重要性をみることにする.
Kenichi Kondo
平成16年3月18日